箱根駅伝出場を目指す、大学生たちの青春物語。
箱根駅伝は、正式名称を「東京箱根間往復大学駅伝競走」といい、1920年よりおこなわれている伝統ある大会です。毎年1月2日、3日に開催しており、年始の風物詩として楽しみにしているファンの方も多いのではないでしょうか。
出場できる大学は、20チーム。毎年有名校が名を連ねていることから分かるとおり、出場するだけで名誉ともいえる大会です。そんななか、無名の大学が挑んでいくというのが本作のストーリー。しかも、陸上競技未経験者もいるという、およそ無謀ともいえるチームで出場を目指していくのです。
蔵原走(くらはらかける)は、寛政大学の新1年生。高校時代は陸上部に所属し、天才ランナーと呼ばれた逸材でした。しかし勝利至上主義の監督とそりが合わず、問題を起こして部を辞めてしまいます。それでも彼は、走ることを忘れることができません。
空腹のためパンを万引きしてしまった彼は、脚力を活かして逃走。しかし同じ大学の4年生である清瀬灰二(きよせはいじ)に捕まってしまいます。成りゆきで彼の住むアパート、青竹荘、通称アオタケに行くことになりました。
実はアオタケは、元々寛政大学陸上競技部の寮。住人たちは強制的に部員扱いされるのに加え、密かに灰二によって長距離ランナー向けの身体に改造されていたのです。彼の強い希望と企みにより、アオタケの住人たちで箱根駅伝を目指すことになってしまいます。
いいかげんに目を覚ませ!
王子が、みんなが、精一杯努力していることをなぜきみは
認めようとしない! 彼らの真摯な走りを、なぜ否定する!
きみよりタイムが遅いからか。
きみの価値基準はスピードだけなのか。
だったら走る意味はない。
新幹線に乗れ! 飛行機に乗れ! そのほうが速いぞ!
彼は、高校時代に父親が監督を務めたチームでハードな練習を積み重ねた結果、故障をして大好きな陸上から離れた経験を持っています。そんな彼だからこその一言。
「速さ」こそが走る全てではない、そんなメッセージが込められています。
右足、左足と交互に踏み出すシンプルな競技だからこそ、価値は人それぞれだと思います。
サッカーも同様で、ボールを蹴れるかが基準なのか、身体能力がすべてなのか、きっと価値は人それぞれだと思います。しかし、考えなければならないと思います。なぜサッカーなのか、なぜ指導するのか常に模索しています。そこにサッカーの価値が現れると思います。
とりあえず、読んでみて欲しい小説です。
特にスポーツに関わる全ての方に。所詮、小説の中の話でしかないかもしれません。
しかし、諦めざるを得なかった人、怪我を経て立ち直った人、天才であるが故の葛藤に抱える人、全くそれに関わりが無かった人、それぞれにそのスポーツを通した物語があると思います。改めて、清瀬灰二のような指導者になれるように日々精進していきたいと思います。
それでは。
Mori Hiroyuki